「あ、タオルどうぞ」

「……あ…ありがとう」

「ちょっと小さめのしかないんですけど」

「ううん、大丈夫」


 オレンジの間接照明が、革張りのソファを照らしている。

 濡れた腕や顔を簡単にふきながら、私はフローリングで膝をかかえる幸記くんにも新しいタオルを手渡した。



 あの後、私は幸記くんを自分のマンションに連れて帰ることにした。

 なにせ突然のことだったから迷ったけど、暗い道に一人たたずむ彼をほっておくことは出来なかったし、家の人に連絡を取るのも難しそうだったから。


 明るい光の下で見る幸記くんは灰色の景色に立っていた時よりもずっと白くて、きれいで。けれど、細すぎるのが少し心配だった。

 濡れているから余計にそう見えるんだろうか。布ごしにあばら骨が見えて……って。そうだ、タオルの前に服をどうにかしなきゃ。


「幸記くん、良かったらシャツ着替えない?」

「え?」

「濡れたままだと風邪引くし、お父さんの服で良ければ」

「……」


 私の提案がよくなかったのか、細い首をぶんぶんとふってシャツのすそを握りしめる。

「だ、大丈夫」

「でも、相当濡れてるし」

「平気、だから……っ、しゅんっ」


 拒絶の言葉とくしゃみが重なる。


 ……やっぱり、身体が冷えちゃってるみたい。