水を吸ったソックスが皮膚にはりつくのが気持ち悪い。

 途切れない雨。
 途切れない蒸し暑さ。

 生ぬるい空気と薄灰のベールにつつまれた、六月の風景。

 けれど中には嬉しいこともあって。


(黒崎くん、今頃なにしてるんだろ)




 ……名前を呼ぶときの気恥ずかしさが、心地好さに変わったのはいつだっただろう。

 そう、黒崎秀二くん。

 雨の日のやり取りをきっかけに始まった彼との関係は、今もささやかながら続いていた。

 と言っても無愛想な黒崎くんは教室では全然しゃべらなくて、偶然二人になった時にしか声をかけてくれなかったけど、私はそれで良かった。


 正直に言うと、黒崎くんが私にだけ話しかけてくれるのが嬉しいという気持ちもあったと思う。


 もちろん、もっとクラスに馴染んでほしい、みんなに黒崎くんのいいところを知ってほしいっていう気持ちもあるけれど。


(きっと、少しずつ伝わっていくよね)


 だって、私でも気づいたんだから。
 頷くと足取りも軽くなる。