「ええっ、く、黒崎くん部活入ったの!?」

「部活じゃなくて同好会な。橋口が写真同好会の代表で、人数不足にならないよう籍を置くだけでいいからって」

「写真かあ、そういえば橋口くん好きだって言ってたよね。黒崎くんが撮ったのも見てみたいな」

「その予定はない」



 放課後。


 時間をあけて待ち合わせた私たちは、駅へと向かう入り組んだ道を二人で歩いていた。

 路地裏というほど薄暗くはないけれど、どこか寂しくてひとけのない道。ここを通るのは、友達やクラスの子と鉢合わせにならないためだった。
 
 別に悪いことをしているわけじゃないし隠す必要もないけど、同じクラスでも部活でもない男子と女子がいっしょに帰っていたらすぐうわさになるし、黒崎くんは学校中に名前を知られているし。

 きっと誤解されたくないだろうからと人目を避けているけど、本当は私が勝手に意識して気を回しているだけなのかもしれない。


 ……私だけが。


 宙ぶらりんになってしまった告白の言葉が頭をもたげるのを宥めて、植木の水で湿った道を歩く。鞄を持つ手に力が入るのを感じながら。


「別に写真じゃなくてもいいよ」

「……?」

「私は、黒崎くんが形に残したいと感じたもの、心を動かされたものを見たいだけだから」