振り返る、血の気の乏しい顔

 最後に会った日よりもずっと痩せた身体は今にも倒れるんじゃないかと心配になるほどで、でも、あの日絶望と後悔だけを注ぎ込んでいた目には、今、確かに私が映っていた。


 短い沈黙。

 板張りの床がちいさな軋みを上げた後、先に口を開いたのは黒崎くんだった。


「日原」


 ごめん、心配かけて。

 何日も喋っていなかったせいか、ひどくかさついた声を絞り出して、黒崎くんがゆっくり歩を進める。朝の明るい光が姿勢の良くない背中に降り注いで、骨ばった肩口をやわらかく照らしていた。

 初めて立ち上がった仔馬のようにふらついた足取りは、けれど、一歩一歩前に進む。何か熱いものが胸の奥からこみ上げて、その場にへたりこみそうになるのをぎりぎりで堪えて駆け寄った。


 夜明けの海のように凪いだ瞳。
 
 動いた拍子に傷が痛んだのか、懐かしむような手つきで目の下に触れて、黒崎くんは続けた。


 
「…………幸記に、全部話したい」