うつむく私に、要さんが白い紙を差し出した。


「これ、病院への行き方と部屋の番号。話はつけといたから」


 えっ、と顔を上げると目の前には眼鏡ごしの冷めた瞳。

 わざとらしいほど素っ気なく告げて、要さんはカチカチと二本目の煙草に火をつけようとした。けれどオイルが切れたのか、銀のライターは軽い摩擦音を立てるばかりだった。


「い、いいんですか?だって、幸記くんは」

「いいよ。征一はいなくなったし、親父だって忙しいんだからわざわざ病院見張ったりしてないでしょ。病気のガキを見舞うだけだ。それより日原さん、ライター持ってない?」


 ぶんぶんと首を振る私に肩をすくめて、身体をかがめる。


「俺は、幸記が嫌いだったわけよ」