そして消えゆく君の声

「勘弁しろよって感じだよ。ただでさえ病人抱えてんのにさ、手遅れになったらどうすんだか」

「幸記くんは……その、良くないんですか」

「くわしいことは聞いてないけど、秀二が引きこもってていいほど良好じゃないね。元々冬をこせるかどうかって感じだったから、よくもってる方なのかもしれないけど」


 心が押しつぶれてしまいそうだった。

 幸記くんは今、一人で病院にいる。
 白いベッドで、自分の砂時計がこぼれていく様子をながめている。


(会いたい)


 あの日、幸記くんは「最後に声を聞きたかった」と言っていた。もう二度と会うことはないと思ったのだろう。私にも黒崎くんにも、もう会えないのだと。

 薄氷の上にあった世界は散り散りに壊れて、もう拾い集めることはできないけど。

 あとはもう、さらさらと風に運ばれて、消えて行くばかりなのかもしれないけど。


(幸記くんに会いたい)


 一人で考えて、一人で戦った幸記くん。

 もちろん、どんな理由があっても人の命を奪うことは許されない。でも、もう一度会いたかった。会って、聞きたかった。


 幸記くんが何を思って刃をふるったのか。

 今、何を望んでいるのか。