そして消えゆく君の声

「やめてよ。日原さんが鈍いのは認めるけど、そういうのは秀二だけで十分だ」

「でもっ」

「何か起こった時に原因を探したくなるのはわけるけどさあ、気付いたところでどうしようもなかったでしょ。それに、無茶と自棄は違う。はた迷惑で馬鹿丸出しだけど、あいつにはあいつの考えがあったんだ。秀二みたいな、何でも自分のせいにしたい奴にはきついだろうけどね」


 征一さんと幸記くんのことで、一番精神的な打撃をうけたのは黒崎くんだった。


 あの日から、電話をしてもメッセージを送っても、何の返事もない。


 もちろん学校にも来ていなくて、普段黒崎くんに冷たい雪乃ですら「あんなに征一さんのことが好きだったなんて知らなかった」と肩を落としていた。


 要さんの話によると、部屋からもほとんど出てこないらしい。


 うなされて、うなされて。
 時おり目を覚ましては夢遊病者のように誰かを探し、はらはらと涙をこぼす。その繰り返し。


 自分を犠牲にしてでも守りたいと思っていた二人を同時に失って、傷付き続けた心はついに、蜂の巣になった。