そして消えゆく君の声

「時間がないと思ったから、ああいうことができたのかね」

「私、全然気付けませんでした。知っていたら、何かできたかもしれないのに」

「いいんじゃないの、向こうも言わなかったわけだし」

「そう、じゃなくて……」
 

 ひざの上に置いた手を、握り締める。
 

 無力な自分が、悔しかった。

 何もできず、ただ慌てて、泣きじゃくっている内に、どうしようもないところまで来てしまった。
 
 笑ってほしいって、あんなに思ってた。
 幸せになってほしいって、これからなれるはずだって、何も知らずに。 
 

「私、どこかで現実から目を逸らしていたんです。きっと大丈夫、全部うまくいくって」

「……」

「もっと考えて行動していたら、何かできたかもしれないのに。幸記くんだって、止められたかもしれない。なのにこんなことになって、何してたんだろうって……」


 視界がにじむ。
 トン、と灰を落として、要さんは天井をあおいだ。