「少しでも調べられたらお終いだったよ。傷口の状態なんて不自然でしかないからね。ま、親父が死んだ息子に無関心な人間で助かった。灰になっちまえば、真相は闇のなか。めでたしめでたし」
うすい唇が、皮肉げに歪む。
嘲笑まじりの言葉に見え隠れする父親への苛立ちを、私は気付かないふりをした。
ばれなくて良かった、なんて考えている身で、お父さんの無関心を責めることはできない。
「俺はもっとあいつに感謝されるべきだよ。まったくさあ、誰のおかげで畳の上で死ねると思ってんだか」
「要さん」
「別に警察に突き出してやっても良かったんだけどね、まあ面倒ごとは嫌いな性分だから。兄としての厚意っていうの?どうせ先の短い人生なんだから、せめて優しくって――」
「要さんっ!」
やめてくださいと声を荒げる私を鼻で笑って、要さんは組んだ指を前につきだした。背筋を反らして伸びをすると、革張りのソファがぎし、と軋む。
「ごめんごめん、さっき物事には順序があるって言ったばかりなのにね」
「……いえ」
別に、要さんの物言いに腹を立てたわけじゃない。真っ向から話されるのが怖くて、心がついていけないだけで。
幸記くんの話に。
あの子に残された、決して長くない時間のことに。
うすい唇が、皮肉げに歪む。
嘲笑まじりの言葉に見え隠れする父親への苛立ちを、私は気付かないふりをした。
ばれなくて良かった、なんて考えている身で、お父さんの無関心を責めることはできない。
「俺はもっとあいつに感謝されるべきだよ。まったくさあ、誰のおかげで畳の上で死ねると思ってんだか」
「要さん」
「別に警察に突き出してやっても良かったんだけどね、まあ面倒ごとは嫌いな性分だから。兄としての厚意っていうの?どうせ先の短い人生なんだから、せめて優しくって――」
「要さんっ!」
やめてくださいと声を荒げる私を鼻で笑って、要さんは組んだ指を前につきだした。背筋を反らして伸びをすると、革張りのソファがぎし、と軋む。
「ごめんごめん、さっき物事には順序があるって言ったばかりなのにね」
「……いえ」
別に、要さんの物言いに腹を立てたわけじゃない。真っ向から話されるのが怖くて、心がついていけないだけで。
幸記くんの話に。
あの子に残された、決して長くない時間のことに。
