そして消えゆく君の声

 ……?


 どこか違和感のある言葉に、目を瞬かせる。けれど、優しい声は止まらない。ばつの悪そうな顔をした女の子に向き合うと。


「嫌な思いをさせたみたいでごめん。秀二は不器用な性格だから、つい心にもない行動を取ることが多くて。本当は素直ないい子なのに」

「えっと……あたしは、その…」

「大丈夫、君は何も悪くないから。ただ、今日のところは僕に免じて許してくれないかな?」

「は、はいっ!征一さんがそう言うなら……」

「ありがとう」


 心からの感謝をそえて頭を下げた征一さん。

 やがて視線を黒崎くんに移すと、瞳に笑みをたたえたまま。


「秀二」


 親しげに名前を呼んだその声は静かで、静かすぎて。

 どうしてだろう。砂漠の砂みたいだった。


「むやみに人と衝突してはいけないよ」  

「……」

「ちゃんと謝らないと」

「……っ!」


 次の瞬間、何がを殴りつけるような乾いた音が辺りに反響して、空っぽのバケツが宙を舞った。