そして消えゆく君の声

 迎えの車はすぐに来た。


 裏口にとめられた車。
 運ばれていった黒崎くん。

 もちろん私は同行できず、大丈夫だよと笑う征一さんにコートを押しつけられた。


 その後、家までどう帰ったのかはわからない。


 夢遊病者のようにふらふらと歩いて、ずっと下を向いていたこと、短い雨が降ったのか、アスファルトが濡れていたことだけは覚えている。

 何度も鍵を開けるのに失敗して、ようやく誰もいない部屋に入って。


 電気をつけようとした手が壁を滑って。
 そのまま、私は床に座りこんだ。


「――っ、う」


 止まっていた涙が、あとからあとから溢れだす。

 怒りか、悲しみか、何が原因で泣いているのかすらもぐちゃぐちゃで、胸に抱いたクッションをきつく抱きしめる。

 指先がしびれるほど力を込めて、ようやく気付いた。怖いのだと。

 怖い。 

 どうしていいのかわからないほど怖い。黒崎くんに刺さった刃を、噴き出した血を思い出すたびに、心がばらばらになってしまう。


 征一さんは大丈夫だと言ったけれど、あんな酷い傷、無事で済むなんて思えない。


 どうしよう、黒崎くんにもしものことがあったら。目が視えなくなったら。神経や筋肉に、一生残るような傷がついていてたら。

 怖くて怖くて、誰かにすがりつきたいのに誰にも話せない。


 ベッドに倒れこんで枕に顔を押しつけると外から救急車のサイレンが聞こえて、両手で耳をふさいだ。