そして消えゆく君の声

 ぬぐってもぬぐっても止まらない涙で、手がべたべたになる。

 全身を震わせる鼓動が苦しくて、うまく息ができなくて、ひたすら嗚咽する私を征一さんは笑顔の消えた目で見つめていたけれど。


「――――」


 やがて白い上靴が一歩近づいて、場違いなほどあたたかい手が額に触れた。

 はりついた前髪をすいて、子供にするみたいに優しくなぜる。驚いて顔を上げると、深く澄みきった目と視線が合った。


「……泣いているから」