そして消えゆく君の声

 征一さんは、静かに息をついた。下げた眉に、どこか自棄に似た諦観――これは、私が勝手に当てはめているだけなのだろうけど――を浮かべて。


「やっぱり、もっと早く手を打つべきだったな」


 言葉とともに、強く身体を押された。数歩後ずさったかかとが滑って、低い机に倒される。

 ばらばらと画材の落ちる音が、近く響く。

 頭上には白い天井と、私と見下ろす征一さん。長めの前髪がたれて、作り物みたいに整った顔があらわになっている。


「先輩。何、を」


 手首にこめられた力が痛い。

 征一さんは目にも口元にも何の表情も浮かべていなくて、あの日文化祭で見たのと同じ、完全な無だった。

 数テンポ遅れて、眉を下げた親しげな苦笑を作る。


「ごめんね。こういうこと、僕自身は関心がないのだけど」


 空いた手が、制服のリボンにかけられる。

 シュ、と布地の擦れる音がしてもまだ現状を理解できなかった私は、冷えた空気が首すじをなでた瞬間、殴られて目が覚めたようにハッとした。


 まさか。

 まさか。
 

「や、やめてください、何をしているんですかっ」

「何をしているのかな。僕にもよくわからない」