そして消えゆく君の声

「黒崎くんは私を選んだわけじゃありません。その、選んでくれたら、嬉しいですけど。でも、私の存在なんて関係なく、黒崎くんは変わろうとしていたんだと思います。黒崎くんが新しい生き方に踏み出すのなら、もし横にいるのが自分じゃなくても、私は……背中を押したいです」


 一つの可能性が、頭の中で回っている。


 もし今私が何もかも話してしまったら、この人はどうするのだろう。

 ひびの入った心のこと。自らの存在が、誰よりも大切な弟を傷つけていること。ひびを入れたのが、弟自身であること。

 思いつきで自らを葬ろうとしたこの人が、心の喪失を知ったら――

 考えるだけで恐ろしかった。

 だから、黒崎くんも言えなかったんだ。失いたくない一心で、何を犠牲にしてでも守ろうとした秘密。


(でも)


 でもその結果、征一さんはありもしない希望に振り回されることになった。ありもしない、訪れない幸福に。

 そして私は今、征一さんの信じるたった一つの希望の光、幸せにつながる鍵を逃がそうとしている。

 手の中で消えてしまわないよう、あの日見たホタルのように。

 何も言わないのはずるいのかもしれない。理解する力のない征一さんに、無理やり理屈を押しつけようとしているのかもしれない。



 それでも私は、自由に飛ぶホタルが見たかった。