そして消えゆく君の声

「今の、すこし言いすぎじゃないですか?」

「誰アンタ、関係ないのに割りこんでこないでよ」

「私、D組の人間です。たまたま話してる声が聞こえて……」

「だからって何で部外者が首突っこんでんの? 呼んでないんだけど」


 きつい口調が怖い。
 怖い、けど。


「た、確かに部外者ですけど、その、いくら腹が立っても言うべきでないことってあって」

「うざいなー。こいつもさっき言ってたでしょ、事実を言っただけって」

「っ事実じゃないです! 黒崎くんは……」


 いらなくなんてない!

 そう口にするつもりだった。
 けれど、しどろもどろな言葉は扉から近づいてきた足音によってさえぎられて。


「?」


 静かな靴音は、けれど不思議とよくひびいた。

 靴音ひとつとっても存在感がある人なんて、学校中を探しても他にいるかどうか。ましてや、この状況に現れそうな人なんて。


「割り込んでごめん。近くを通ったら、たまたま話し声が聞こえたから」


 同時にふり返った私たちの前で、「その人」は校門前で見たのと同じおだやかな笑みを浮かべた。


「秀二、何かあった?」


 そう。

 黒崎くんのお兄さん、黒崎征一さんが。