そして消えゆく君の声

 笑いを堪えられない私たちを、周りの子たちが不思議そうに見ている。

 それがいたたまれないのか、黒崎くんはますます困惑した表情を浮かべて、終いには本に視線を戻してしまった。


「黒崎、昼メシの件約束したからな」

「……わかった」

「何なら八屋のラーメンでもいいし、ってかそれがいい。そっちにしよ」

「……わかったから、静かにしろよ」


 煩わしげに寄せられた眉も、不機嫌そうな声も、変わらない。

 それでも、流れる空気が変わったのがわかる。

 ずっとわだかまっていた灰色の雲が晴れて、新しい道を照らしだしたのが。

 黒崎くんが、厚く重たいカーテンの中から、足を踏み出したのが。



 私は笑いながら、人差し指で目尻をぬぐった。笑いすぎたふりをして、滲んだ涙をごまかした。

 何かもかもが、オセロをひっくり返すように変わるわけじゃない。

 背負った荷物を全て下ろせる日は、きっと来ないだろう。


 それでも黒崎くんは悩んだり、怒ったり、時には喧嘩をしたり、笑ったりしながら、一歩ずつ自分の人生を歩いていくのだと思う。

 どこにも行けなかった暗闇から、光の差す場所へと。



 その先にあるものが青空であるようにと、心から願っている。