そして消えゆく君の声

 小さく、小さく。吐息ほどの大きさで告げられた言葉。


 けれどそれは確かに、目の前の橋口くんに向けられたものだった。

 長いあいだ、何も見なかった黒崎くんの二つの目に、目を丸くした橋口くんの姿が映っている。


「……用事、あったから」

「……」 

「……」

「……なんだ」


 見開かれた目に宿る、安堵の色。


「だったら行かないって言えよなあ。俺の飯、お前待ってる間にちょっと冷めたんだぞ」

「ごめん」

「いいけど、今度昼メシかなんかおごれよ。で、次からはちゃんと連絡すること。これでチャラな」


 嬉しそうに、本当に嬉しそうに話す橋口くんに、黒崎くんは落ちつかなげに目を伏せて視線を泳がせる。

 その仕草が恋でもしているみたいで、私は思わずふきだしてしまった。


「……なに笑ってんだよ」

「ごめん、えっとほら、橋口くんの髪すっごい寝癖ついてたから」

「え、俺?」

「うん。何かの尻尾みたいになってるね。橋口」