そして消えゆく君の声

 翌日。


 あまりの寒さについ二度寝して、遅刻ギリギリで教室にかけこんだ私を迎えたのは、角居ちゃんの楽しげな笑顔だった。


「おはよ。ひーちゃん、スカートのホック前になってるよ」

「お、はよう……昨日は、お疲れ様……」

「疲れた疲れた、何せずっと質問攻めだったから。ひーちゃんに飛び火させて逃げようと思ってたのに、帰っちゃうんだもんねえ」


 あははと笑って、パックのコーヒー牛乳を飲む。

 ……私の恋愛話なんて、大学生の恋人の話に比べたら十分の一のインパクトもないと思うけど。


「昨日いっぱい騒いだから、今日学校に来てるの変な感じする」

「私なんて、今日は休もうかと思ったよ。そうすれば通知簿ももらわずに済むしね」

「角居ちゃんは胸張って持って帰れるからいいよ。私今日は親両方とも早く帰ってくるし、今度こそ予備校行きなさいって言われるかも」


 せっかく平均点以上を目指して頑張った数学だけど、結果はまたも『ギリギリ補習圏外』。

 いくら文系コースでも、そろそろちゃんと勉強を始めないといけないのかもしれない。


「誰か得意な人に教えてもらったらいいんじゃない?」

「得意な人って言っても、友達大体文系だから」

「そうだねえ。私も数学は、人に教えられるほどの成績じゃないし」

「気持ち良く年末を迎えたかったのになあ」


 深いため息をつく私の後ろで、椅子を引く音が響く。次いで、鞄の留め具を開く音。