「あんたさあ、謝れって言ってんのがわかんないの?」
朝の喧騒につつまれた下足室。
そこに突然、女の子の怒声がひびいた。
「あれなに?」
「なんか喧嘩みたいだけど……」
ひそひそと囁かれる声。
ざわついていた声が潮のように引いて、急激に空気がはりつめる。
声を上げたのは、傘立ての前で細い腕をくんでいる女の子。
つり上がった目、肘をつかむ薄桃の爪。長い髪を逆立てんばかりに怒って、思いっきり眉間をよせた表情で目の前に立つ相手をにらみつけている。
視線の先に立っているのは。
「……黒崎くん?」
知らず、口からこぼれた声。
靴箱に軽く背を預けて、面倒そうに女の子と対峙していたのは黒崎秀二くんだった。ようやく怪我が治ったのか、革の鞄を持つ手からは包帯が消えている。
「人にぶつかっておきながらすみませんも言えないわけ?」
「よそ見していたのはそっちだろ」
「なに言い訳してんの?!最悪!」
「事実を言って何が悪いんだよ」
顔を紅潮させて怒りをぶつけている女の子とは反対に、黒崎くんの態度は無関心そのものだ。
それが余計に腹立たしいのか、女の子はさっきよりもワントーン高い大きな声をはり上げた。
朝の喧騒につつまれた下足室。
そこに突然、女の子の怒声がひびいた。
「あれなに?」
「なんか喧嘩みたいだけど……」
ひそひそと囁かれる声。
ざわついていた声が潮のように引いて、急激に空気がはりつめる。
声を上げたのは、傘立ての前で細い腕をくんでいる女の子。
つり上がった目、肘をつかむ薄桃の爪。長い髪を逆立てんばかりに怒って、思いっきり眉間をよせた表情で目の前に立つ相手をにらみつけている。
視線の先に立っているのは。
「……黒崎くん?」
知らず、口からこぼれた声。
靴箱に軽く背を預けて、面倒そうに女の子と対峙していたのは黒崎秀二くんだった。ようやく怪我が治ったのか、革の鞄を持つ手からは包帯が消えている。
「人にぶつかっておきながらすみませんも言えないわけ?」
「よそ見していたのはそっちだろ」
「なに言い訳してんの?!最悪!」
「事実を言って何が悪いんだよ」
顔を紅潮させて怒りをぶつけている女の子とは反対に、黒崎くんの態度は無関心そのものだ。
それが余計に腹立たしいのか、女の子はさっきよりもワントーン高い大きな声をはり上げた。
