「え……」


 弾かれたように振り返ると、立っていたのはスーツ姿の若い男の人。

 痩せた身体に神経質そうなつり目。前髪のすき間から、険しい瞳で私を見すえている。


「この家に何か用でも?」

「え、っと、その」


 威圧的な語調に、声が上ずる。

 組んだ腕は手ぶらで、寒いのにコートも着ていない。もしかして、ここで働いている人なのだろうか。


「私、く、黒崎くん……ああの、黒崎秀二くんのクラスメートです。今日は、どうしても話したいことがあって、来たんですが」

「そのような話は伺っておりませんが」

「あっすみません、約束とかはしてないです。正面から入れば良かったんですが門がその、立派すぎて、ええと……」


 しどろもどろになる私に、男の人の表情が蔑みへと変わる。

 足元から頭のてっぺんまで、値踏みするように視線を這わせると。


「それで、コソ泥のように他の入り口を探していたと。こんな時間に。失礼ですが、あまり礼儀を知らないようですね」


 とがった言葉を突きつけられて、腰が引ける。