ぐっとかかとを上げたまま、私は途方にくれた。


 会いたい、会わなきゃばかりで、方法なんて全然考えていなかった。

 門の横にはカメラつきの呼び鈴が取りつけられているけれど、到底押せるような雰囲気じゃない。

 駄目元で携帯に電話しても聞こえるのは呼び出し音ばかりで、何もしていないのに門前払いされた気分になる。


(……って、駄目駄目。ほかの入口を探さないと)


 ぶんぶんと首を振って、進路を変える。

 壁同様の表門よりはまだ裏口のほうが取り次いでくれる可能性が高い、気がした。


 暗い夜道を、塀伝いに歩き続ける。


 歩いても歩いても、見えるのは同じ風景ばかりだった。

 水も漏らさない塀。森を思わせる木々。明かりが少なくて、真っ暗闇を歩いているようだ。


 こんなお屋敷じゃ、助けを求めても誰にも届かない。どれだけ泣いても、誰にも聞こえない。

 寒さにかじかむ指先でそっと胸をおさえると、痛いほどの鼓動が伝わってきた。


 歩き続けること、数分。


 どこまで行っても変わらない景観に戻ろうかと思い始めた時、不意に小さな木の扉とインターホンが目に入って、私は小走りで門に近づいた。

 だけど。


「……そこで何をしているんですか」


 扉に触れようとした瞬間、冬の空気よりも冷淡な声が行く手をさえぎった。