そして消えゆく君の声

 声をかける女の子たちに優しく微笑み返す征一さん。

 ちょっと迷惑そうに長い中指で眼鏡をもちあげる要さん。


「わぁ……」


 この光景、どこかで見たことがあると思ったら、来日した海外俳優を出迎えるファンだ。

 車で通学する御曹司なんてドラマや漫画みたいな光景なのに、この二人だと様になってしまうのだからすごい。 


(さすがは王子様)


 そう、王子様。これほど二人をよく表している言葉はないと思う。


 ほんの少し首をかしげる度に、きれいな髪がさらさらと揺れる征一さん。

 柔和で上品、でも決して弱々しい印象はない左右対称の顔としなやかな四肢。紅茶色の目は陽に透かすとガラス玉みたいに澄んでいる。


 隣に立つ要さんはいつもまっすぐに背筋を伸ばして、眼鏡越しに覗く視線は冷たい。

 遊びと無縁で冗談が通じない人。でも、そんなところが素敵だってみんな言っていた。叱られてみたいって。


 対照的な二人の王子様は物語みたいに完全無欠の存在だった。何をしてもみんなの目を惹く。

 同じクラスの子いわく、あの車はカボチャの馬車と同じらしい。乗ったら幸せを約束されるから。


 ……黒崎くんは、いつも歩いて登校しているみたいだけど。