マルカブ。シェアト。アルゲニブ。アルフェラッツ。低い位置でぽつりと輝くフォーマルハウト。

 1等星がひとつしかない秋の星座は穏やかな光で夜空を彩り、そんなところが好きだと言うと、隣の席の女子生徒は頰を染めて喜んだ。


 星に限らず、自分が何かに好感を抱くことを歓迎する人間は多い。

 ということは、実際には何も好きでないと知ったら失望するのだろうか。

 海にも、飛行機にも、旅にも、本にも、音楽にも、心を動かされたことは一度もないと。



 この一年で五十七回、数え方を変えれば八十六回、試行した。

 どこかに、心の水面が波打つ瞬間があるのではないかと。

 神や自然に祈ったこともあれば、中学生という立場上あまり好ましくない行動を取ったこともある。


 結果はいつも同じだった。


 何も起こらない。感じない。

 同じ材料を型に流したチョコレートのように、形だけが異なる同一の日々が、人生として出荷されていく。そうやって、最後の一日まで歩んでいくのだろう。


 だから、もういいかと思った。


 これ以上は必要ない。

 これ以上は、意味がない。