そして消えゆく君の声

「えーっと、あの角を曲がった先が駅だっけ」

「そうそう、あ、今日はこっちの道行こ。ちっちゃい神社があるんだけど、紅葉がきれいなの」

「神社って、縁日やってたとこ?」

「うん、あんなに大きくないし、縁日もやってないけど」


 今日、幸記くんが外出していた理由。


 どこに、何の用事で行ったのか。気にならないといえば嘘になる。


 でも、話したくないのは何となく伝わってきたし、無理に問い詰めて今の楽しい雰囲気を壊してしまうのは嫌だった。せっかく幸記くんと外を歩いているのに。


 だから私は、せいいっぱい五感を使って秋の風景をさがした。


 特別じゃなくていい。ちょっと幸せになれるような、ホッとできような場所。

 そんな風にあたりを見回すと、見慣れた町のあちこちに幸せのありかを見つけた。


 普段目をやらないだけで、美しいもの、安らぐものは日常にたくさんひそんでいるのだと今さら気付いた。


 もみじをかぶったお稲荷さんにお参りして、太った茶トラ猫と遊んで、金木犀の香る石畳の路地を抜けて。


 ちょっと特別な散歩道の終わりは、アパートとマンションにはさまれた公園だった。

 あまり広くない敷地にあるのは、楕円形の砂場とすべり台のついたアスレチック、水色に塗られたブランコだけ。しかも、遊具はあちこち錆び付いている。