そして消えゆく君の声

「よっ……と」


 数センチの段差をこえて古びた青色のベンチに腰を下ろすと、雨粒が次々と透明な屋根を伝っていくのが見えた。

 黒崎くんは傘をたたもうとも、横に座ろうともせずに、ただその場に立ち尽くしている。 


「黒崎くん、教えて」


 こんな風に視線を交わしたのは、屋上での一件以来かもしれない。向き合った瞳が、ピントを合わせたカメラみたいにお互いに集中している。


 吹き抜ける風に押し出されて、私は問いかけた。


「どうして私を、避けてたの」


 ビクリとする痩せた肩。


「……避けてなんか」

「嘘。私、ずっとずっと不安だったんだよ」


 きゅっと唇を噛んで、手の中の革鞄をにぎりしめる。

 口をついた言葉は詰問しているみたいな強い語調で、自分の声じゃないみたいだった。


 私、どうして怒っているんだろう。


 不安の反動?
 悲しかったから?
 寂しかったから? 

 心のなかがぐちゃぐちゃで、よくわからない。