そして消えゆく君の声

「雨、強いね」

「ああ」

「えっと、提案なんだけど」

「?」

「もし時間大丈夫だったら、小雨になるまで待たない?」


 このままじゃ二人ともずぶ濡れになるからと、私はビニール屋根のついたバス停を指さした。

 歯医者の前に立つ市バスの停留所にはいつも何人かお客さんがいるのだけど、今日はめずらしく無人だった。休診日なんだろうか。


「こんな大雨一時的なものだろうし、無理に帰るより少し待ったほうがいいと思うんだけど」


 どうかな?と、首をかしげた私に黒崎くんはまた視線を巡らせて。

 けれど、何も言わずに屋根のほうへと向かってくれた。


「ありがとう」


 隣に並んで、小声でお礼を言う私。 


「なんで、礼とか」

「だって黒崎くん、早く帰りたかったでしょ?」

「…………」

「ありがとう、待ってくれて」


 戸惑いを帯びた視線が私の目に伸びる。
 理解できないといった表情で。