「ごめん。ぼーっとしてたみたい」

「桂がぼんやりしてるのはいつものことだけど、最近ちょっと変だよ」


 何かあったの?と顔をのぞきこまれて、あわてて首を横に振る。

 雪乃は親友だけど、いくらなんでも黒崎くんのことを相談するわけにはいかない。


 ………でも。


「あのね、ちょっと聞きたいんだけど」


 私とちがって、すごく男の子にもてる雪乃。

 雪乃だったら、今の私と似た悩みを抱いたことがあるかもしれない。


「もし、その……友達の男の子に好きだって言われたとして」

「え?なに、桂告られたの?」


 いきなり身を乗り出してくる雪乃に、さっきよりも大きく首を振る。


「た、例えばの話っ」

「例えばねえ、まあいいけど」


 意味深な笑みを見なくてもバレバレな嘘だってわかっていたけど、ここは思い切って話すしかない。


「その子のことは大好きだけど、それは恋愛としての好きじゃなくて」

「あるね、そういうこと」

「好きな人はその子ととても仲のいい人で」


 組んだ指に、自然と力が入る。
 雪乃は笑うのをやめて、じっと私を見ていた。