そして消えゆく君の声

「あの」

「なあに」


 考えるより先に、口が動く。


「それって、要さんには止められないんですか?」

「俺?」


 私はこくこくと頷いた。
 何でもいいから活路を探したかった。


「今、幸記くんに後ろ盾が無いって言いましたよね。それって、お、お父さんや征一さんは幸記くんに無関心で、黒崎くんが守ろうとしても、あまり話を聞いてもらえないからだと思うんですけど」

「そうだね」

「じゃあ、要さんがやめろと言えば、誰も幸記くんに手出しできなくなるんじゃないでしょうか。要さんは何でもできるし、その、しゃべるのだって上手ですし、だから」

「――ストップ」


 早口でしゃべる私を片手でさえぎると、要さんは「はぁ」と深いため息をついた。


「言いたいことはわかるけどね、俺に家の奴らへの影響力なんてないよ。親父だってあいつの間に合わせくらいにしか思ってないし」


 背もたれに体重をあずけて、ゆっくり足を組みかえる要さん。

 眼鏡の奥の目は理知的で、運動神経も抜群だって聞いている。どうしてこの人がこんな風に自身を卑下するのかわからなかった。