そして消えゆく君の声

「ごめ……やべ、青春すぎる」

「笑いごとじゃないですよ、山のほうだからタクシーも呼べなくて」

「だからってホテルとか、どんな顔して入ったんだか」


 よっぽどツボに入ったのか、笑えるとか動画撮ってないのとかひどいことを言いながら目尻をぬぐう。

 細い煙草は半分近くが黒くなっていて「要さん、灰が」と言うと思い出したように灰皿に火を押しつけた。


「ごめんごめん、最近面白いことに餓えてたから」

「だから、笑いごとじゃありませんってば。黒崎くんたちが征一さんに何かされたらどうしようかと思って、私……」


 もし私のせいで二人がひどい目に遭ったら、なんて謝ればいいのかわからない。

 うつむいて目を伏せる私を見ると、要さんはスッと笑みを引っこめて細いあごに手をあてた。


「あの日、というかあの週全体だけど。征一は親父とお出かけ中だったから日原さんの心配するようなことは起きなかったよ」

「そう、ですか」


 ありがとうございますとちいさな声で付け加えると、軽く頷いてから。


「それと、一応訂正しておくと二人じゃなくて一人ね。征一は秀二以外には手を上げないよ」