「気持ち悪い。朝から馬鹿みたいに話しかけてきて何のつもりだよ、いい加減うんざりする」

「き……」


 気持ち悪い。
 十六年生きてきて、初めて投げつけられた言葉だ。

 少し……ううん、かなりショックかも。言葉そのものより、それだけ嫌われてるっていう事実が。


「ご、ごめん。でもあの、傘貸してもらったし、ちゃんとお礼言わなきゃなあって」

「もう返したんだから、用は済んだだろ」

「そうだけど……同じクラス、だし」

「だから?」

「だから、えっと……」


 突き刺さるような言葉に、怒りより先にチクチクした痛みが胸のなかに広がる。

 なんでこんな風にしか話してくれないんだろう。全身が、他人を拒絶しているみたい。

 黒い目や髪も、濃い色に浮かび上がる白い包帯も、壁の向こうにいるように遠い。


「…………」


 気まずくて、何を言っていいのかわからなくて、ただ立ちつくす私。

 でも。


(……あ)