ぎゅっと両手を握って、こみ上げる痛みをやり過ごす。

 次に足が止まったら、今度こそ黒崎くんに負ぶってもらわないといけない。

 移動速度を考えればそうすべきなのかもしれないけど、それは申し訳ないというか、いくらなんでも恥ずかしいというか……。


(足の裏が無事だったら靴脱いでるのに……)


 ソールと擦れるたびにひりひりする皮膚がどうなっているのか確認するのも怖い。

 一歩進むごとに足首の骨を擦る革紐をうらめしく思いながら、私は引きつった笑顔で「平気だよ」と返そうとした。

 …………ら。


「日原」


 歩幅と、私の歩調のせいで自然前を歩く形になっていた黒崎くんが唐突に振り返った。

 かろうじて点灯している街灯の、弱々しい明かりに照らされる私の足元を見ると、躊躇いなく距離を詰めてきて。


「えっ、な、なにっ?」

「先に言っとく、これはしょうがない」

「しょうがないって、その、つまり……?」

「そういうわけで、じっとしてろ」


 怒ってるのか何なのかよくわからない声でそう言うと、手に持った鞄を横に立つ幸記くんに手渡す。


 一体どうしたのだろうと首をかしげると、次の瞬間、かるく膝を折って有無を言わさず私の身体を抱き上げた。