車を走らせて10分

「ごめんな」

沈黙を破ったのは橘先生だった

「目覚ました時、俺そばにいなくて悪かった。びっくりしたでしょ」

「...」

「回診いっててさ30分くらいで戻る予定だったんだよ。まだもう少しねてるかなと思ってたけどすずが起きた」

「...」

「よし、寿司食おう寿司!」

何を言わない私の機嫌を損ねないようにか話を変えてくれた。
橘先生の行きつけのお寿司屋さん
回らないお寿司やさん
高そう

この時間でもカウンターしか空いてなく
横並びに並んで座った

橘先生は自己抜去したあとの傷を気にしてて
ちゃんと止血されてるか確認されたが
それだけで脱走したことや病気のことは何も言ってこなかった。


「ごちそうさまでした。」

「うまかった?」

「美味しかったです。」

「またこような」

たらふく食べてお店を出た。
もう2時を回っている

「医者と患者がこんなことして良いの」

「まだ正式に担当させてもらってるわけじゃないし大丈夫。すずが俺を信じて治療するって決めるまで俺は待つ。決めたら教えて。それまで友達だ」


そのまま車に乗って家に送ってもらった


「遅くまでありがとうございました
お寿司も美味しかったです」

「うん。」

「じゃあ...」

「明日病院これそ?」

車を降りようとした私を呼び止めた
さっき待つってゆったじゃん、、、

「明日くるタイミングは任せる、朝でも昼でも晩でも。なんなら迎えにきてやる。だから病院きて欲しいんだけど、、、」

「今日はごちそうさまでした。」


橘先生の言葉を遮ってお礼を言って車を出た

あんまり体調よくないし行かなければいけないのもわかってるけどフラッシュバックして行けないのもわかってる


また倒れるとみんなに迷惑かけるし
もうこれ以上、関わりたくない

病院や医者に関わりたくない





ただお寿司を食べて多少の気分転換にはなった。
認めたくないけど橘先生という人の恐怖感がマシになったし友達として?なのかもっと先生のこと知りたいと思った

矛盾してるよね、私。