「ちょ、ちょっと待て……。俺としたことがどうも何かをどこかで聞き間違えたようだ。もう一度最初から言ってくれないか」

 セシリーは、先程と同じく真っ直ぐに目を見つめ、きっぱりリュアンに告げようとした。したのだが……。

「ですから、ここで勤めることになったと言うのは全部真っ赤な嘘でひゅっ……! っくくくくくく!」

 ついにこらえきれなくなり、途中でしゃがみ込んで笑いの衝動に身を任せ始めた。もうこうなれば止まらない。

「…………へ? ちょっと待て、でもキースが、キースだって……っキース、お前!?」
「ごほっ!!」

 そして、振り向いたその悲しそうな顔にキースも耐えられなかった。盛大に身体をくの字に折り、地面に膝まで突く。