冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

 セシリーが手を添えていた、白く太い柱はそうしている内も徐々に崩れて低くなっていった。そこから浄化され光になった瘴気が、女神たちが上空に開いた異なる世界の扉に導かれ、吸い込まれるようにその姿を消してゆく。後三歩――。

 そこでリュアンは、セシリーの足元にあるふたつの石が……ちか、ちかと瞬くのを見て不思議なことに気づいた。

 ……影が、差さない――。

 気付いたその瞬間、駆け出していた。
 
「セシリーっ!」

 瘴気が身を焼くのも構わず彼は跳び込むと、肌を炙られるような痛みも忘れてセシリーを掻き抱く。だが……。

「ごめんなさい」