冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

 言い淀んだセシリーの言葉をリュアンが継ぐ。

「そうだな。またちょっとばかり迷惑を掛けるけど、ある程度仕事を片付けたら、ふたりで旅に出よう。兄上やレミュール王妃にも挨拶をしなきゃならないし、それに、ちょっと行きたい所もあるから。俺の代役はラケルにやらせるさ……あいつ、お前のために俺と張り合うくらい強くなってたんだ。でも、しっかりとけじめは付けさせて……またそれからだな」

 リュアンは成長した彼の後ろの姿を見て明るい顔で笑った。しばらくはわだかまりは完全には消えないかも知れないが、きっとまた彼らが一緒に笑い合える日は来るだろうとセシリーは思う。後四歩――。

「ガレイタムでは大変でしたね。私、びっくりしちゃいました。リュアン様が王子様だったなんて……でも、あの時は驚くばかりでちゃんとお礼も言えなかったけど、私……助けに来て貰えて嬉しかったです。大事にしてもらえてるって、わかったから。きっと私だけだったら……ラナさんと、あなたたちの姿を見ていなかったら、今こうして、ここまで誰かのために祈れなかった」