冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

 済まなそうに言うセシリーに、リュアンは真面目くさった顔で言う。ふたりの距離はもう後六歩ほどだ――。

「言っておくが、もう四度目は無いからな。向こうに戻ったら……もうお前を離さない。誘拐なんて絶対させない。お前が嫌だって言っても、離れてやらない。ずっと、傍にいるから」

 その言葉に、瘴気の中で見えづらいにもかかわらず、セシリーの顔が真っ赤になった。

「そ、そういう事は、もうちょっといい雰囲気の時に言って下さいよ」
「いや、お前は目を離すとどこかにいなくなるから、もうここで決めておく。戻ったら……俺と結婚してくれ、セシリー。婚約指輪は、まだないんだけどさ……王都に戻ったら一緒に買いに行こう」

 頭を掻きながらリュアンは、恥ずかしさを押し殺すと言い切った。セシリーは、瞳が潤むのを懸命にこらえると、嬉しそうに頷く。後五歩――。

「はい……絶対ですよ。それじゃ……今回の祝勝会も兼ねて、皆を呼んで、婚約披露もさせてもらっちゃったりして……」