冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

 引っかかるものを感じて首を傾げたラケルがややあって頷くと、リュアンが強引に彼を押し退けて前に出た。

「お前ばっかりセシリーと話すな。今は俺の恋人なんだ」
「……普通それ傷心の部下の前で言います? 憧れの騎士団長だったのに、幻滅しましたよ。帰ってからいくらでも話せばいいじゃないですか」
「うるさい黙れ……今の俺にとってはセシリーとの一分一秒が最優先なんだよ」
「言ってて恥ずかしくありませんかそれ。……はぁ、それじゃお望み通りふたりきりにしてあげますよ。もう辺りには魔物も見当たりませんが……エイラさんをあのまま放置しておくのも危ないですし、周囲を見張っておきます。それじゃセシリー、また後で」
「うん」

 ラケルの背中に手を振り終え、セシリーはリュアンとふたりきりで残された。

「お前が攫われた時は、ひやっとしたぞ……まったく。こんな短い期間にいったい何度攫われるつもりなんだかな……このお姫様は」
「あはは……最初会った時の人攫いは未遂だったから、マイルズの時と、ジェラルド様の時、それから今回も。三度目ですよね……度々ごめんなさい」