冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

「待てるか……! すぐそっちに行く!」
「ダメ!」

 それを強く遮ったのは彼女の鋭い声で……。リュアンはそれも構わず駆け寄ろうとするものの、再びの制止を受けようやく止まる。

「ダメよ……ふたりとも、どうせ戦いの後であんまり魔力が残ってないんでしょう? そんな体でこっちに来たら、すぐに影響を受けて倒れちゃうから。心配しなくても、もうすぐ終わります……」
「む……」

 ふたりとも、苦笑を見せたセシリーに少しだけ緊張がとけ、その場でじっと待つ。その間にも、少しずつ、黒い円の半径は狭まり……後、十歩分、九歩分と小さくなるのを待ちきれない様子で、彼らはじりじりと空いた傍から距離を詰める。

「ラケル……」

 彼女に呼びかけられたラケルは、叱られた子供のようにびくっと体を震わせる。しかし……ぐっと拳を握ると、顔を上げ、セシリーに謝罪する。