冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

「セシリーが何かしたのか……?」
「……それしか考えられないでしょう。今まで誰もどうにかできなかった封印を……。本当に、すごいや」

 希望の色が戻ったふたりは、一刻も早く彼女の元に駆けつけようと馬を走らせる。

 気づけば、あれほど強かった中心部に向いて吹き込む風が止んでいる。瘴気が酷ければ馬を置いて進むつもりだったが……今やもうその心配はなさそうだ。

 そして見えた……今や元の数十分の一にまで縮小した黒い瘴気の山が。
 半分透けたようなその内部にはセシリーの姿がはっきりとあり、リュアンはあまりの嬉しさに大きく手を振って叫んだ。

「セシリーっ! やったな!」

 その外側に寝かされていたエイラには目もくれず、リュアンたちは馬を飛び降りると、駆け寄ってゆく。

「待って!」