冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

 その他にも色んな人々の願いが、時計塔に吸い込まれ、光の橋を形作ってその場所へと送られてゆく。サニアもフレアの背中を見つめて尻尾を振ると……自らをそうした光に変え、跳ねるように橋を目指して飛び込んで行った。

 



 あれ程大挙して押し寄せていた魔物たちがいつの間にか数を減らしているのを不審に思いながら、リュアンはラケルを伴い、馬で砂丘の中心部へと走る。

 レオリンは部隊を率いて退路を確保しながらこちらに向かっている。負傷者の治療なども必要だし、どのみち、強い魔力を持たなければ、瘴気の中心部ではきっと耐えられないのだ。しばし行軍速度を緩め回復を図るのも立派な判断だろう。

 だが、事の終わりの予兆を顕著にリュアンもラケルもその肌で感じている。今まで、ずっと薄曇りに包まれていた空が、明るみを増している。そして、遠くに見えていた黒い靄の山も、もうほとんど見えない。