同僚に窘められたが、その正騎士は言い返す。

「そういう事じゃなくてさ。俺たちも、誰かに言われるままじゃなくて……自分の意思で考えて、何かするべきことがあるんじゃないのかって思ったんだよ」

 ――太陽の石が破壊された翌日、彼らは王城に集められ、直接国王からこの国にまつわる聖女の逸話が史実であり、これからその再来が起きようとしていることを聞いた。多くの同僚たちがレオリンの指揮の下西方のリズバーン砂丘へ派遣され、今はその戦況の連絡待ちだ。

 国民にこの話はまだ伝わっていないが、家族を逃がそうとする者は王国軍の中にもいるだろうし、時計塔で大規模な改修工事が行われているのも事実だ。町でも噂くらいは広まってのかも知れない。

 もし騒ぎになり、暴動が起これば自分たちも駆り出されることになるだろう。それに戦況次第では、今すぐにでも連絡が来て、国民をどこかへ安全に避難させないとならない。

 そうなれば、一体どこへ……とは思うが、それは正直言って分からず、不安ではある。だがどこだろうと、王国の上層部が出来る限りの手を尽くしてくれることを信じて、有事の際に国民たちの命を救うべく行動する……それが、王国軍正騎士団に所属して日々の糧を得ている彼らの、せめてもの通すべき筋だろうと、この正騎士は思っていた――。