冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

(団長、ごめんよ……。少しだけ……セシリーの髪留めを、貸してちょうだい。こいつを、叱ってやらないといけないから)
「ああ……」

 リュアンはそっと胸元に手を突っ込むと、取り出した髪留めをリルルの身体の上に静かに置く。

(ありがとう……団長。……まったく、本当に馬鹿だなぁ、ボクの兄弟分は)
「この、声って……まさか、リルルなの?」

 リルルのこと以外が目に入らない様子のラケルがその身体を強く揺さぶったが、白い狼は目を開けることは無かった。

(そうだよ、ラケル……。お前が、いけないことをしようとしてたから……兄弟のよしみでさ、止めてやろうと思って……)
「そんなの……頼んでない!」
(頼んでなくても……やるんだよ。だって、家族だもん……そうじゃない? ラケルだって、ボクが悪戯すると、叱って、くれたでしょ?)