冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

 リュアンは見た……白い影が彼の元へ飛び込んだのを。

 直後、砂の大地を吹き飛ばしながら火炎は突き進んだ後、魔力を失って消えた。
 砂煙が収まり視界が徐々に開けてゆく。

 リュアンは悔いるように顔を歪ませ、唇を噛み締める。

 残っていたのは……ラケルと、彼の膝の上に横たわったリルルの姿だった。

「どう……して」

 ラケルは……信じられないという瞳で、毛皮のところどころを焦がし、目を開かないリルルを見つめている。リュアンはふたりの傍に、疲れ果てた体を引きずりながら歩いていった。

「リルル……? 目を、目を開けろ! なんでお前が……」

 白い狼の身体を揺すっているラケルの前までリュアンがたどり着くと、その耳にまたリルルの声が聞こえた。