冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

「だから、なんだっていうんだ! 僕らは生まれた瞬間から世界に勝手に立ち位置を決められてる! 欲しいものがあるなら、力で奪うしかないんだ! 僕は……彼女以外いらない! リュアンさんがセシリーの隣にいるから……あなたを殺すしか、ないんだぁッ!」

 吹き荒れる炎はさらに勢いを増し、火の粉が衣服の端に燃え移る。リュアンは懸命に歯を食いしばりながら叫んだ。

「そんなことをしてもっ……セシリーはお前をっ……見ては、くれないぞっ! お前の中のセシリーは、こんなことをして喜ぶ奴なのか……っ」
「そんなこと……! わかっててもこれ以外の方法なんて無いんだ! ……もう、消えてしまえ――!」

 ラケルは瞳から涙をこぼすと絶叫した。輝きを増した灼熱が、リュアンの身体を押し潰す。手首に嵌めていたアメジストの腕輪が晒された魔力に耐え切れず砕け散り、彼の膝がついに折れた。

(ここまで、なのか……。いや……!)