「『雷精よ、紫電の盾にて刃を(かえ)し、罪の報いを受けさせよ』!」

 目前に迫った危機は考える暇を与えてくれず、リュアンは手から雷を生じさせた。『瞬駆』と同様、ガレイタムの禁書庫にあった魔法書から知り得た特殊な魔法。それは蜘蛛糸のように広がって絡み合い、幾重の層を作って火炎を正面から防ぎ止めた。普段詠唱を使用しないリュアンの全力の防御魔法であり、どれ程の威力がある攻撃だろうとそのまま返せるはずの、ある意味彼の切り札とも言える魔法だったが……異常な火力はそれをものともせずこちらへと押し進む。

「ぐっ! く、そっ……」

 踵が砂を削り、体が後ろへと追いやられる。このままリュアンが押し負ければ、この魔法は大勢の兵士たちを焼き尽くし、命を奪う。そんなことを絶対仲間にさせるわけにはいかない。

「ラケル、やめろ……! お前、何の為に魔法騎士団を志した! その手で、誰かを救うためだったんじゃないのか! 自分の力を誇示するためじゃないだろ!」