冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

「発動した魔法の……制御を奪った? ……いえ違う。魔力そのものが、彼女を傷つけることを拒んでいる……? 意思を……交わしているの? そんなことできるはずが……」

 今、セシリーの周りでは瘴気と化していた大きな魔力すら、触れる端から浄化され、清らかな光へと変わっていっていた。彼女を守るように取り巻き、広がっていく光の輪は、見るも美しい幻想的な光景だった。

 セシリーはそれらを嬉しそうに微笑みながら見上げた。

「この子たちに私たちみたいにはっきりとした意思はないと思う。でも……こうして私の心を汲み取ってくれて……ちゃんと他の子たちにも伝えてくれているみたい」
「セシリー……そんなことをできたのは、あなただけよ……。でも……」

 明らかに……人の身には許されない大き過ぎる力だ。代償が伴うのは必然だった。セシリー自身の身体からも薄っすらと光が放たれ闇に溶け込んでいく。

 望んで自分から、彼らと……魔力と同じものになろうとしている。エイラの使う安っぽい変身の魔法などとは次元が違う。不可逆かつ、取り返しのつかない変化。