冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

「…………これで、終わった……。はぁ……」

 こぷっと、またも血を吐いたエイラは、膝を落とすと祈るように目を閉じる。
 しかし、その耳が砂を噛む音を聞きつけ、顔を大きく跳ね上げた。
 
「どう……して」

 前からは、無傷でこちらに向かってくるセシリーの姿があった。

 有り得ないことだ。彼女は防御用の魔法陣すら描いておらず、もちろん詠唱もしていない。

 例え、聖女としての力が有ったとしても、この濃度の高い瘴気の中では十分に発揮できない。エイラは確実に葬れる自信と覚悟の下で、命を削ってまで魔法を放ったのだ。

 だが現に彼女にはかすり傷も見受けられず、その動きになんのぎこちなさも無い。呆然とするエイラの目の前まで進むとセシリーは、少し控えめに笑い、やがてかがみ込むと、エイラの体を優しく抱いた。