冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

「別に、好きで連れてきたわけじゃないわ。私が呼び出していた二体の魔物に、万一あなたの姿が見えたら攫って来るよう命令しておいただけよ。もしかしたらと思ってね……おかげであの赤髪の子は、王子様と戦えたみたいだけど」
「ラケルになにかしたの!?」

 キッと強く睨むセシリーにも、エイラは穏やかに返答した。

「いいえ。ちょっとばかり素直になるおまじないをして、魔法を教えてあげただけよ。元々あの子自身、とても素晴らしい才能を持っていたから。時代が違えばひとかどの人物になれていたでしょうね」

 それだけでは彼がリュアンを裏切るような真似をすまいとは思うのだが、これ以上は詳しく話してくれない気がする。加えて、セシリー自身もここでやらなければならないことがある。

 彼女に確認するまでも無く、セシリーは確信しつつ白い柱を見上げる。

「これが、『暗黒』という存在と、リズバーンが一緒になった姿なのね……」