冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

 白い光がセシリーを包み、不浄な瘴気を遠ざける。荒く息を吐いて呼吸を整えたセシリーの身体は、ある地点で地面に放り出され、蛇の姿は手のひらほどに小さく縮みどこかへと這い進んでゆく。

「ここは……」

 おそらく、そこは廃墟だと思われた。いくつもの瓦礫や崩れた建物が、白砂にうずもれた状態で地面から突き出していたが、それらは試しに触れただけでそれは粉々に砕けてしまう。

(エイラ……あなたなんでしょ? 私をここに連れてきたのは……)

 なんとなくそう思いながら、小さな蛇が使役者の元に戻ると信じ、闇の濃い中心の方に向かって近づいていく。きっとこうしている内にも、一分一秒と自分の寿命は削られるのだろうが、それを気にしている余裕もない。

 そこは静かな場所だった。建物を風が通り抜ける音だけが微かに響き、光も差さず、動く者も自分以外には誰もいない……物悲しく、しかしどこか安らぐような……そんな、寂しい世界。