冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

 からくも受け止め、離れてゆくセシリーの姿を見ながら続く攻撃をかわすリュアン。そうして逃げ去る大蛇と自分との間に立ち塞がった部下の姿を、彼は苛立たし気に咎めた。

「ラケル……どうしてお前が!」
「追わせませんよ、団長……。ここであなたとの決着をつけ、彼女にふさわしいのは僕だと証明させてもらう!」
「やはり、お前はセシリーを……」

 赤い目を爛々と光らせると……ラケルはかつての憧れに剣を付きつけ、尋常でない速度で襲い掛かった。





 ――ドポッ……!

 大蛇と共に封印の膜が覆う瘴気の中に飛び込んだ時、まるで汚泥の中に突き落とされたような不快な感覚がセシリーを襲った。息を吸う度に体の中の魔力が荒れ狂うのを感じて、吐きそうになりながらもセシリーは、身に付けていた小さなポーチから銀の手鏡を取り出して祈る。